最近の研究で、「心不全のある患者さんは認知症になりやすい」というものがあります。具体的にいうと、「心不全患者さんは脳細胞へ届けられる血液量や酸素が低下しており、前頭葉や頭頂葉を中心とした機能低下に関連している」というものです。しかも、これらのデータは小規模研究では無く、メタアナリシスという最もエビデンスレベルの高い(つまり真実である可能性が高い)論文のデータです1)。うれしいことには、この心不全患者さんにおける認知機能の低下は不可逆(もとに戻らない変化)なものでは無く「有酸素運動(散歩など)を習慣化することで部分的に改善する」効果も報告されています。2)


運動習慣のもたらす効果は多岐にわたりますが、心臓が悪いと言われていて運動を控えている、しようと思いながら出来ていないという患者さんは、認知症の予防という観点で運動を始めてみるのもいいかもしれません。(今の心臓機能や認知機能が知りたい、どのくらい運動したらいいのか分からないという方は、お気軽にご相談下さい)
1)Anesthesiology 2015; 123:1198-208
2)Cardiopulmonary Rehabilitation and Prevention. 40(6):407-413